クラス案内

川口工房

 ルネサンスの頃、アフレスコ・セッコから絵具が形を明確にし、それぞれの特徴により分かれていきましたが、そんななか油彩の確立に向けて、テンペラ絵具と油彩が重層的に併用された時期があり、其の描き方を混合技法と言います。まず全ての波長をはね返す白色を他の色とは違うものと認識することから始めます。初めはテンペラの白色で形象の為、色の為、そして光の為と使い分けることから覚え、基本を学びます。白色の幅さえ分かれば、そのまま油彩の白色に置き換え、組み立ても見えてきます。

形象や色はもともと皆さんが持っているものです。重層的に成立する構造を理解し乍ら自らの世界を求めていきます。水曜日は油彩経験者、土曜日は基本からと分かれていますが、ご自身の判断で決めても構いません。全て個人のレベル、ペースで進みます。敢えて違いを言うなら、話の内容が少し難しくなることくらいです。「解った」の積み重ねです。

 

 

担当 川口起美雄

川口起美雄《故郷を喪失したものたち》920×920mm、1982年 東京オペラシティ アートギャラリー所蔵
川口起美雄《故郷を喪失したものたち》920×920mm、1982年 東京オペラシティ アートギャラリー所蔵


友清工房

このクラスでは主に油絵具とキャンバスの使用を基本とした伝統的な絵画技法を学びます。初級、中級者クラスではまず模写等を通し、油彩技法の基礎ともいえるカマイユと呼ばれるモノトーンの色調から出発する制作手順を学び、その実践をこなしていきます。またキャンバスの下地作りや絵具作りなど行いながら技法の組成的な理解を深め、その応用を目指し、受講者各々の作品発表を視野に入れた制作に歩調を合わせていく内容となります。この工房では特に、形象、色彩、光、をつかさどる油絵具の「白」の使い方を体感として理解、会得することが重要となります。授業は基本的に半年で一作品完成させる内容で進行していきますが、あくまでも様子を見ながら個人のペースに合わせていきます。伝統的な技術を学び、継承し、自身の制作にその技術が応用され、自らの表現と油彩表現の可能性を探ることができる足掛かりになればと思います。

 

担当 友清大介

友清大介《ripple》1303x1620mm、2021年
友清大介《ripple》1303x1620mm、2021年
友清大介《葡萄》410x318mm,2023年
友清大介《葡萄》410x318mm,2023年


鍋島工房

これから絵を始めたい方から中級者、団体展に挑戦している、してみたい方など、いろいろな受講者に、対応するクラスです。油彩、アクリル系、パステル、卵テンペラ、油彩混合、ガラス絵、3Dトリックアートなど、絵の表現は多様です。私はパリやフィレンツェで、イタリアルネサンスからバロックの絵画技法を美術学校や職人の工房などで研究し、帰国後は長年作家として色々な制作経験と発表を積んできました。それぞれの受講者に合った画材選び、制作のノウハウから作品作りまで、適切な指導とアドバイスをさせていただきます。絵の楽しさは、一人でも仲間でも絵を〔描く〕、展覧会などで絵を〔見る〕、個展、グループ展などの発表で絵を〔見せる〕、この三つの広がりから生まれると思っています。デッサン力に不安を感じる必要はありません。制作と同時に基礎も学んでいけます。ぜひこの機会に絵を始めてください。

 

担当 鍋島正一

 

鍋島正一《サンジョルジョの桟橋》、130号、テンペラ・油彩
鍋島正一《サンジョルジョの桟橋》、130号、テンペラ・油彩
鍋島正一《朝の桟橋 ベニス》120号、油彩
鍋島正一《朝の桟橋 ベニス》120号、油彩
鍋島正一《ヴェニス》15号、油彩
鍋島正一《ヴェニス》15号、油彩
鍋島正一《Stazione di Tokyo》120号、水彩
鍋島正一《Stazione di Tokyo》120号、水彩


鈴木工房

私が混合技法による作品作りを始めた頃、その支持体作りから描画への一連の行程をひとつひとつ確かめるように段階を進め、下地層から図像形態の糸口を見つけ出し、イメージと組み合わせて描いた作品を今でも覚えています。即興性が作者に潜在する形を呼び覚ますことが表現に繋がること、そこに私は魅了されました。画材がその物質性から作者の意思と共に有機的に発言していく表現を習得しようと試行錯誤の繰り返しだったと思います。それからは絵作りの意味を考え、美術の歴史を考えていくことが私の学習の柱となりました。魅力の一つ、この技法で描かれた作品はテクスチャーが美しいんです。それは何故か。

作家は何を描くのか、その源泉(オリジン)を探求しなくてはなりません。

このクラスでは古典と現代を往来します。皆さんの表現世界は、個人の感性と、そこに寄り添う技巧の共生によって成就します。唯一無二である自分の表現に何が必要であるか、それにはどのようなアプローチが必要であるか。克服していくためのアドバイスをさせていただきます。初級、中級、上級クラスを設けました。油彩の他、imageを育むための鉛筆画、コラージュなども学ぶことができます。様々な視点の取り組みを用意しました。

 

担当 鈴木伸

 

鈴木伸《ヒヤシンスの王》170x170mm、テンペラ・油彩混合技法、2015年
鈴木伸《ヒヤシンスの王》170x170mm、テンペラ・油彩混合技法、2015年


田中工房

対象を前にして美しいと感じたり、心にあるイメージを自由に表現したいと絵筆を取る行為は、現代においても変わらない喜びをもたらしてくれると思います。とりわけ古典絵画をマスターしていくと豊かな色彩表現や、様々な質感の描き分けなどがより一層可能になり、描いてみたいイメージに近づいていく楽しさを感じることができるでしょう。

一方、表したいイメージに近づくために、支持体をはじめ、絵具や溶き油の特性を理解しながら描き進めると、次から次へと課題が見つかっていきます。それらひとつひとつと向き合いながら、一枚の作品を仕上げていく過程は、さらなる表現へと導いてくれます。このクラスでは油彩画を始めてみたい方や、古典絵画技法を手掛かりに表現の幅を広げたい思っている方などを対象に、油彩とテンペラの混合技法及び油彩画の初歩を学んでいきます。

 

担当 田中靜

 

田中靜《水辺のダンス》803×1167mm、2014年
田中靜《水辺のダンス》803×1167mm、2014年
田中靜《晩夏の夜》455×333mm、2023年
田中靜《晩夏の夜》455×333mm、2023年
田中靜《翼に似た雲が流れる》530x333mm、2020年
田中靜《翼に似た雲が流れる》530x333mm、2020年


安田工房

このクラスは、これから油絵を始めたいという方が「混合技法」を用いた絵画制作を学べるクラスです。

混合技法とはルネサンス期に使われていた技法で、油絵具とテンペラ絵具(顔料と、水と油からなる乳剤を混ぜ合わせたもの)を併用する技法です。

こういうと、とても専門的で初めての人には難しいように思われるかもしれませんが、混合技法こそが、油絵を始めるにあたって最も入りやすく、また上達も早い技法なのです。現在日本で作られている絵具やキャンバスは印象派やゴッホのような描き方ができるようにキャンバスの目は荒く、油絵具は盛り上がるようにできています。こういった画材は使っていて楽しいものではありますが、なんとなくそれっぽく描けてしまうため、本当の意味で絵を描く力が身に付きづらいのです。

混合技法にはこういった手軽さはありませんが、形をしっかりと描き、油絵具の美しさを活かした色を出す、といった本当の絵を描く力が身に付きます。

もうひとつ大切にしたいのは「物語」です。現在油絵というと写真のように実物そっくりに写し取ることが良い絵と思われがちですが、もともと絵画は古くから人の思いや思想を表現するものでした。昔は寓意画や宗教画という形が多かったですが、現代の我々にとっての物語とは「内的現実」です。つまり一人一人が心の奥底から掬い上げたイメージ、その人にとっての現実です。当然それは実際の現実とは違っていいのです。描く人間の形と色が創り上げる心の世界です。

また油絵を始めるのに年齢も関係ありません。物事は若いうちに始めなければいけないと思われていますが、油絵で大切なことは自分だけの表現を見つけることなのです。むしろ年齢を経てからの方が様々な蓄積がある分、他の人には出来ない表現に辿り着けるかもしれません。

油絵を描いていると、絵具が描き手の心の深いところに応えてくれることがあります。そんな瞬間は描き手にとって大きな喜びです。

あなたの心に眠る、あなたにしか描けない絵を、ここで探してみてください。

 

担当 安田雄大

 

安田雄大《春》600x450mm、 2023年
安田雄大《春》600x450mm、 2023年
安田雄大《幼年時代》460x450mm、2022年
安田雄大《幼年時代》460x450mm、2022年
安田雄大《最後の家》400x300mm、2023年
安田雄大《最後の家》400x300mm、2023年


オンライン工房

zoomによるオンライン専門のクラスです。

内容は上記対面のクラスと同じですが、担当の川口と友清が交替で指導します。PC、スマートフォン等のデバイスがあればご自宅から、世界中どこからでも対面クラス同様のクオリティで受講が可能です。zoom接続が不安な方にはテスト接続の機会とスタッフによるサポートも設けておりますのでご安心ください。

 

担当 川口起美雄

   友清大介