アフレスコ・セッコ(乾いてしまった漆喰壁)への描画では展色剤で練られた絵具が形を整え、pigment(顔料)+vehicle(展色剤)=colors(絵具)が成立した。この時点ではtemperare(混ぜる)された「混ぜ絵具」程度の意味が強かったのだろうが、やがてより明確に「乳剤」で練られたものがtempera(テンペラ)絵具となった。さらに油彩が確立していく中で、土性系や白色(鉛白)のテンペラ絵具がその中に組み込まれ、重層的な構造を持つに至った。これが混合技法といわれ、テンペラ絵具と油彩が併用された描き方である。白色が如何に使われたか。油彩を識るうえで最も基本的で、大事な考え方がここにある。やがてその白色は、16世紀後半から17世紀バロックにかけて画家により油彩の白色に置き換えられていった。このような白色を中心とした描画のための動きを理解し、追体験していくことで「分かる状態」が生まれ、その先の各々の表現へと繋がっていく。